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2024.06.11

相続財産に不動産があったら3年以内に相続登記の申請をしなければ罰則を科される!?相続登記申請義務ってなに?弁護士が解説します!

 不動産登記簿を見ても所有者が直ちに判明しない所有者不明土地の増加が土地の適正な活用を阻んでいるという社会問題が近年メディアでも度々取り上げられるようになりました。調査の結果、調査対象となった土地の約2割が所有者不明となっていることが判明しました。

 所有者不明土地の主な原因は相続登記未了との調査結果から不動産登記法が改正され、令和6年4月1日から相続登記の申請が義務化され、相続や遺贈により不動産を取得した相続人は3年以内に相続登記の申請をしなければ罰則として過料が科されることとなりました。

 しかし、後述する法定相続分での相続登記は負担が大きく、遺産分割協議も相続人間で争いがあり3年以内にまとまらないケースもあります。そこで、新たに相続人申告登記という制度が設けられました。


1 相続登記申請義務

(1)申請義務の対象について

 令和6年4月1日以降、以下2つを知った日から3年以内に相続登記の申請を行うことが義務化されました。

  ①被相続人の死亡等を知り自身が相続人であること

  ②特定の不動産を相続で取得したこと

(2)令和6年3月31日以前に発生した相続について

 令和6年3月31日以前に発生した相続財産についても、相続登記申請義務の対象となります。令和6年4月1日時点で上記2要件を満たしている場合は、令和9年3月31日までに相続登記をする必要があります。上記2要件を満たしていない場合には、2要件を満たしてから3年以内に相続登記をする必要があります。


2 相続登記申請義務の履行条件

(1)遺言による登記

 被相続人が遺言書を作成していた場合、遺言によって不動産の所有権を取得した相続人が、取得を知った日から3年以内に遺言の内容を踏まえた登記の申請を行うことで申請義務が履行されたとみなされます。

(2)遺産分割での登記

 相続人が複数人いた場合、相続不動産を一人が相続するのか、複数人で相続するのか話し合いが行われるかと思います。話し合いがスムーズに進み遺産分割協議書が作成できればそれをもって登記することができます。しかし、相続人間で話し合いが進まず3年以内に遺産分割が決まらないこともあります。その場合、次の(3)または(4)の登記をすることで申請義務を履行したものとみなされます。

(3)法定相続分での相続登記

 全ての法定相続人が法定相続分の割合で不動産を相続した旨の登記です。こちらは、改正前の不動産登記法の下からあった制度であり、法定相続人が単独で行うことができる登記となっています。しかし、この登記をするためには法定相続人の範囲及び法定相続分の割合を確定する必要があるため、被相続人の出生から死亡に至るまでの戸籍謄本等の書類の収集が必要であり、登記のための登録免許税が登記申請人の負担となってしまいます。そのため、相続人には利用しづらいものとなっていました。

(4)相続人申告登記

 そのため相続人申告登記制度が新設されました。①不動産の所有権の登記名義人について相続が開始した旨、②自らがその相続人である旨を申請義務の履行期間内(3年以内)に法務局に申し出ることで当該申出人について申請義務を履行したものとみなすものです。

 相続人が複数存在する場合でも各相続人が単独で申出が可能であり、添付書面としては申出をする相続人が、自分が被相続人の相続人であることがわかる戸籍謄本を提出することで、申請をする相続人の氏名及び住所等が登記に付記登記されます。また、登録免許税についても非課税措置が適用されることになり、(3)の相続登記よりも利用しやすい制度となりました。


3 遺産分割成立後の登記申請義務について

 上記2(3)(4)の登記では、それぞれ法定相続持ち分に応じた登記と自身が法定相続人である旨の登記しかなされていない状態です。そのため、遺産分割協議がなされた場合、以下の者は遺産分割から3年以内に登記の申請を行わなければなりません。

 ①法定相続分での相続登記(上記2(3))をした場合

   ⇒法定相続人のうち遺産分割によって法定相続分を超えて不動産を取得した者

 ②相続人申告登記(上記2(4))をした場合

   ⇒申出を行った相続人のうち遺産分割によって不動産を取得した者


4 罰則について

 相続登記申請義務を「正当な理由」なく怠った場合、10万円以下の過料が科されます。「正当な理由」とは以下の5つの事情が認められるような場合です。

 ①相続人が極めて多数に上り、かつ、戸籍関係書類等の収集やほかの相続人の把握等に多くの時間を要する場合
 ②遺言の有効性や遺産の範囲等が相続人等の間で争われているために相続不動産の帰属主体が明らかにならない場合
 ③相続登記の義務を負う者自身に重病その他これに準ずる事情がある場合
 ④配偶者からの暴力等により避難を余儀なくされている場合
 ⑤経済的に困窮しているために、登記の申請を行うために要する費用を負担する能力がない場合

 また、これらに該当しない場合でも、個別の事案における具体的な事情に応じ、登記をしないことについて理由があり、その理由に正当性が認められる場合には「正当な理由」があると認められます。


5 まとめ

 不動産登記法の改正により相続不動産の登記申請が義務化され、長年にわたって未分割であった遺産分割を解決する必要があります。

 しかし、相続人間の争い、被相続人の死亡から年数が経過しているために相続人が多数に増えてしまい協議が困難、連絡が取れない相続人がいるなどして遺産分割ができないといったご相談を当事務所にいただきます。当事務所の代表弁護士は、相続人が20名以上の相続や、相続人が海外に居住しているなどの解決困難な相続についても解決実績がございます。相続については初回の相談料は無料になっておりますのでまずはご相談ください。

※なお、本記事は執筆当時の法令、判例を前提にしており、法令の改正等によって結論が変わる可能性があります。

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